随筆・忘れられない看護士さんたち

2017年10月に東京医科歯科大学附属病院の呼吸器内科に人生で初めて入院してから、わずか1年半のうちに計らずも4度お世話になった。もちろん肺がんのステージ4という状況からすれば、やむを得ないことであることは承知している。
ところで、入院といえば医師よりも看護士さんには随分お世話になってきた。ことに最初の入院では多くの日々に肺から水を抜くためのチューブが体に差し込まれていて、ベッドから自力で出ることも出来なかったので、看護士さんには体を拭いて頂いたり、トイレの世話をして頂いたりで頭が上がらない。
多くの看護士さんはいつもマスクをしているので、顔は大抵知ることがないが、何度か担当で顔を出されると声や雰囲気は覚えてしまい、時には雑談に付き合ってもらうようになった人もいる。
あいそちゃんは最所に入院したときに、その年の新卒ですと言って話しかけてくれた娘だ。新卒だったためか他の看護士さんと違って毎日顔を出してきた。チューブをさした所の絆創膏を交換するときなどは先輩看護士さんを呼んできて確認している姿などが何とも初々しかった。だが翌年になるとすっかり何でもこなして逞しくなっていた。
ゆかりちゃんは何故かいつも入院手続きの担当で、入院の初日にお会いする。自分が外来で抗がん剤を打っているときのカルテもチェックしてくれているそうで、いかにも頼もしい。小さなお子さんがいるとのことなので、つい両立できるのか気になってしまったりする。
お二人の他にも気持ちのいい看護士さんばかりで、これまでの入院生活はいつも快適だった。それも後1度の予定になってしまった。もう抗がん剤が打てなくなってしまったのだ。せめてはかないとは考えないように、彼女たちの姿を思いだしたりしている日々である。