随筆・書きたかった小説

定年退職したら中国近代史を題材にした小説を書こうと思っていた。この分野を書く作家は少なく、にもかかわらず題材は多いからだ。
現在の代表的な作家と言えば、まず浅田次郎が挙げられるが、中国近代史小説4部作が完結してしまい、今後はわからない。唯一4部作外の「長く高い壁」があるので期待はしたいのだが。
中国近代史小説といえば陳舜臣が力を注いでいて、「日清戦争」や「阿片戦争」などの長編力作もあるが、先年亡くなられてしまった。
北京原人の失踪を描いた「五十万年の死角」で江戸川乱歩賞を獲った伴野朗にも「白公館の少女」などがあるが、こちらも他界している。
他方、題材としては、阿片戦争なら道光帝の心の動きは面白味があるし、日清戦争なら外務省等の資料が豊富にある戦争の動機を書いてみたい。西太后日清戦争の戦費を使い込んだという説があるし、光緒帝には毒殺説も語られている。
残念ながらがんを宣告されて以来、資料集めなどが困難になってしまい、小説執筆を実現できなくなったのが心残りではある。